土佐の芝居絵と絵馬台

手長足長絵馬台と絵金派

高知県香美市土佐山田町・八王子宮の夏祭りに「手長足長絵馬台」が絵金派の作品と共に展示されました。境内での展示は1997年が最後で、実に22年ぶりです。また、八王寺宮が建立されて550年の節目であり、特別に絵馬台が組まれました。絵馬台に絵金作品を陳列する例は高知県内において散見されますが、「手長足長絵馬台」ほどの大規模なモノはありません。ライトアップされた絵画と彫刻からは荘厳な雰囲気を感じることができました。この絵馬台の柱は、土佐山田の宮大工により「手長、足長、昇り龍、降り龍」が彫刻されています。
絵金は、絵師・金蔵(弘瀬金蔵1812-1876)のことであり、幕末、明治に土佐で活躍した絵師のことです。絵画のテーマは芝居絵であり、歌舞伎や浄瑠璃のシーンが描かれています。絵金は謎の多い人物で 歴史研究は途上です。 狩野派に入門し、確かな画力を持っていましたが、贋作事件により城下を追放され町絵師として活躍したとされています。作品には作者を判別する落款や制作年が記されてない為、美術的な価値が認められず、持続的な維持・保存の面で問題が残っています。八王寺宮に寄贈された絵画作品としては、絵金とその弟子、河田小龍の作品があります。
絵金派の作品が高知の祭礼文化として幕末より受け継がれていることは、他県に類例のない貴重な芸術文化遺産であると思います。高知県では、氏子の高齢化や様々な問題により夏祭りの規模は縮小されています。また、絵金派の作品の陳列が中止になる事態にも見舞われています。絵金派の作品は幕末より高知県中東部に多く残っており、特に香南市赤岡町の絵金蔵を中心に保存・研究が進められてきました。しかし、地域の神社や公民館で保管する作品もあり、劣化損傷は進んでいます。朝倉神社や郡頭神社では絵馬台(櫓)に襖絵を展示する手法をとっており、地域にとってはこの絵馬台の設営だけで大変な重労働になっています。祭礼文化として、絵馬台、絵金がある風景が高知特有の風景であるため、その光景をできるだけ残したいと思いますが、地域との協働や実情への関わり方などは難しい問題が包含しています。

令和元年7月24日

境内に設置された「手長足長絵馬台」全体図




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